5年ぶりの入浴

介護の仕事をやっていてよかった。昨日つくづくそう思った。3月からそらいろに来ている男性利用者Mさんが、5年ぶりにお風呂に入ることができたからだ。Mさんは78歳。原因不明の両下肢脱力で立つことはもちろん歩くこともできなくなった。以来、自宅でベッド…

「家に帰る」

「家に帰る」。そらいろデイに来ている89歳の爺さん。「舎弟が来るんだ」。「いつくるの?」「これから来るんだ」。そう言って玄関まで1人で歩いていき、靴を履き始める。「ちょっと待ってらんしょ」「今、息子さんに確認するから」「息子なんていいんだ」。…

介護とお世話の違い

「お仕事は何をされているんですか」「介護の仕事です」「へー、介護ですか。それは大変ですね」「そうですか?」「だって食事の世話や、お風呂のお世話、なによりお下のお世話でしょ。大変ですよ」「確かにそう言われてみれば、大変なのかも知れませんね。…

歴史と文化の町 桑折?

宮城県との県境に近い福島県伊達郡桑折町という小さな町が私の故郷だ。人口一万人ほど。かつては徳川幕府直轄の半田銀山と奥州街道、羽州街道の分岐点として栄えた宿場町だったが、現在は往時の賑わいなど感じるすべもないほどに廃れた通りがあるだけとなっ…

妻の一言

東京から故郷に戻り、築110年の実家を改修して始めたデイサービス。この11月でちょうど3年が経過した。開業当初の3カ月は利用者ゼロ。文字通り閑古鳥が鳴いていた。当時のスタッフたちは口にこそ出さなかったこど「大丈夫だべか」と思っていたのは間違いない…

患者となる

目の焦点がずれはじめるのが眩暈の兆しだった。午後の入浴介助を終えたあたりから、頭がクラクラし始め、やがて天井がグルグルと回りだす。このグルグルが半端ない。目を開けていられないほどだ。そして激しい嘔吐。立っていられなくなり、ベッドに横たわる…

コーヒーの話

東京から戻り実家で介護事業を始めて3年になる。最近、朝食の後、ペーパーフィルタードリップでコーヒーを淹れることが楽しみになっている。 コーヒーが大好きだったというわけではないが、東京にいた時から朝食後はコーヒーを飲むのがルーティンだった。と…